自動車にも抵当権が設定できるのを知っていますか?
知っている法律家も少ないですが、実は「自動車抵当法」に定められているんです。
昭和二十六年法律第百八十七号自動車抵当法
(この法律の目的)
第一条 この法律は、自動車に関する動産信用の増進により、自動車運送事業の健全な発達及び自動車による輸送の振興を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「自動車」とは、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)による登録を受けた自動車をいう。但し、大型特殊自動車で建設機械抵当法(昭和二十九年法律第九十七号)第二条に規定する建設機械であるものを除く。
(抵当権の目的)
第三条 自動車は、抵当権の目的とすることができる。
(抵当権の内容)
第四条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移さないで債務の担保に供した自動車(以下「抵当自動車」という。)につき、他の債権者に先だつて、自己の債権の弁済を受けることができる。
あまりなじみのないのは、車検証には所有者と使用者の欄があって、信販会社が債権の保全をするのに不動産と同じように抵当権を設定するのではなく、所有者を信販会社にして使用者を債務者にする保全のやり方が一般的なんです。(所有権留保)
では、どのような場合に使用するのでしょうか?
不動産と比べ自動車を所有している方はとても多く、自動車に抵当権を設定することで、一般の人、特に若い人などに対する数十万円から数百万円の貸付の際には迅速かつ容易に担保を取得することが出来るのです。また、日頃、日常的に業者間で金銭の貸借がある場合には自動車の抵当権をもっとご利用することをお奨めします。また、金融機関様の場合、ご融資の担保に自動車の抵当権を検討されてはいかがでしょか? 特に運送事業者様の場合、トラックなど高価な車を所有されていると思われますので、この制度が大変有効です
※所有権留保と違い車の所有権は債務者になります。
自動車の抵当権の設定
自動車に抵当権を設定する場合には、自動車登録ファイルに登録を受けることが、第三者に対する対抗要件になります。この登録は自動車の管轄の陸運支局に行うことになります。
自動車の抵当権の設定に必要な書類
①抵当権登録申請書(その1)第5号様式
②抵当権登録申請書(その2)第5号様式登録義務者(債務者)の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
③登録権利者(債権者)の資格証明書(個人の場合は住民票、法人は登記簿謄本)
④原因証書(金銭消費貸借契約書等及び抵当権設定契約書の写し及び原本)
⑤債務者の印鑑証明(発効後2か月以内)
⑥委任状(代理人が申請する場合 ※登録義務者は実印押印、登録権利者は認印でもよい
⑦車検証コピー(書類作成のため)
自動車抵当権を使用する場面
高級車を分割払いで売却したにもかかわらず、所有権留保の契約をしていないで、登録も完了してしまったケース。
所有権留保で登録するには、その実態が必要です。後になって担保が必要になったとしても所有権留保に変更することはできません。この場合担保を取るのであれば、譲渡担保か、自動車抵当権を使うことになります
※所有権留保とは 自動車をローンで買う場合は、所有者の欄に信販会社や、ディーラーの名前がのっていることがありますが、これが所有権留保です。
登録免許税
- 設定:課税標準額(債権金額又は極度金額)×1000分の3
※100万円の場合、¥3,000円になります。
登録事項等証明書取得
抵当権の設定をした場合、その情報を明らかにするために、「登録事項等証明書」(現在事項)を同時に取得する必要があります。
自動車抵当権の抹消に必要な書類
債権者(抵当権者)の委任状 (実印)
債権者(抵当権者)の印鑑証明書 (発効後2か月以内のもの ※1)
債務者(自動車所有者・抵当権設定者)の委任状 (認印)
登録免許税 1000円
弁済証書または抵当権放棄書の原本 (コピーを提出、返却されます。)
自動車検査証のコピー(作成のため)
※自動車抵当権は、車検証には記載されません。従って、高級車を現金で買い取る時は、現在証明を取得して確認する必要があります。